生と死。

黄色くなった葉っぱ。やわらかな日の光。あたたかい背中。ぬくもり。
今幸せに感じるもの。


昨日の夜、いろいろ検索してみたけれど、最悪の場合は甲状腺がんということで。
5年以内の生存率は70%らしいね。今の状態と照らし合わせると。実際3割も死んでるってことなんだから、恐いことだ。いつも、7割って結構生きてるじゃんって思ってたけど。
あるサイトで、首にしこりが出来た人が検査に行ったことまでは日記に書いてあるけどその後が無くて、その4ヶ月後に事情により閉鎖にしますって文が載ってるサイトを見たときには、背筋が冷たくなった。その人、今も元気だろうか。


M男くんのことを思い出した。癌で亡くなった。あたしの知らぬ間に。
若いから進行が早くて、発見されたときにはもう遅かったらしい。
K原さんが末期の頃にもよくお見舞いに行ったりしてたみたいで、デート帰りに公園に車を停めて話してたときに、詳しい話をしてくれた。壮絶だったと。周りも辛いけれど、本人は想像もつかないくらい辛かっただろうと、K原さんは話しながら涙を滲ませていた。


違うことも思い出した。
高校のとき、数学のチューターでS木くんっていう人がいたけれど、ある日、どうして研究者になるの?って聞いたら、こんな答えが返って来た。
自分がすごく珍しい難病にかかってるから、その治療法が無い今、自分で研究するしかないのだと。命がかかってるんだ、って彼が静かに答えたとき、圧倒された。
その頃のあたしは、そうか、がんばってねって言った気がするけれど、一瞬周りの音が消えた気がする。


一期一会とはよく言ったもので。もう二度と会えないかもしれないって思うと、名残惜しいし、本当に100年も経ってしまえば、今いる人なんてほとんど生きていないわけだ。
今日なんて、もう本当に誰に対しても怒る気なんて起きなくて、ただ生きていること、息をしてここにいることを味わっていた。


それにしても、人生っていろいろあるなぁ。
大学入ってから仲良しだったMちゃんのお母さんも癌で入院って言ってたし、S嬢のお母さんは癌で亡くなったと聞いてるし、Yちゃんのお母さんも癌取ったって。
そういう場合に、癌が見つかった人とか、その家族の大変さって、大変だなぁで終わってた気がする。今まで。その立場にはなれないから本当にはわからないことだったけど、今はそのときよりはわかってきた気がする。


生があって死があって。死が見えてきて初めて、生にちゃんと向き合って。
人間ってアホだなぁ。


今日帰りに夜間で病院に行ってきたけど、喉の痛み用の薬はもらってきた。
看護師らしきおばさんが、診察室を出てから変な顔をしてた。2,3日様子を見て変わらなかったら、すぐに大学病院とか大きい病院に行って、検査をしなさいと。最悪、CT撮らなきゃいけないらしい。
昨夜ネットで調べてたから、それが大体何を調べるのかは見当がついていた。冷静に。
おばさんが神様のお告げをしているように思った。神様の声。ちゃんと聞かなきゃって思った。


ちょっと熱っぽい。
授業終わった後、部室でHさんを発見した瞬間から、やたらと話しかけちゃった。
全部聞いてくれた。マジメにコメントもしてくれた。軽めに励ましてくれた。
一緒にご飯を買いに行ってくれた。彼は食べてる途中なのに。


なべさんをかわいがった。頭をハグしたり、髪の毛をわしゃわしゃしたり。彼の背中にもたれかかって、頬をくっつけていた。デニムを通して伝わってくる、あたたかさ。彼の体温。
無邪気にゲームをしているなべさんとNさんとか、とにかくそういうことにすごく癒されて。


結局、死んだら何も持っていけないから、そのときの友達とか家族とか、それがすべてというか。うまく言えないけど、ベストの状態にして死ねるわけじゃないものね。普段のまま死ぬんだものね。
部屋だって同じ。誰か来るから片付けるとかじゃなくて、突然だものね。プッツリ。
もし仲違いしてたとしても、そのままだし。
みんな死んでいくのに、笑って喧嘩して泣いて。そうやって生きてる。
今のあたしは、人生のプライオリティが変わりそう。何が大切なのかって。


死ぬときに何を思い出したいかと言えば、美しい景色かもしれないし。
大事な人と、美しいものを観たり、たくさん思い出を作りたいと思う。いっぱい話したいし、黙って一緒にいるのもいいし。
まだしたいことがいっぱいある。


生きてるって、とにかく生きてて、目が見えて、音が聴こえて、五体満足健康で生きてるって、すごいことだ。
死のうって思ってるうちなんて、何もわかってなかった。見えてなかった。
確かに死にたいときだってあるけど、すごいよ、これ。黄色い葉っぱが見えるんだよ。
好きな音楽が聴けて、大好きな人に触れられて、幸せだって思えるんだから。


思いがけぬDRAMAに、生を噛みしめる一日だった。
静かな幸せがひたひたしてる。